1.衝撃のタイトルに惹かれて
タイトルを見た瞬間、心の奥にずしんと響いた。思わずぎょっとしてしまう。
「もしかしたら、多くの女性が一度は心のどこかで思ったことがある感情なのかもしれない…」
そんな挑発的な言葉に、「一体どれだけのクズ夫が登場するのだろう?」と興味津々。
人の家庭を覗き見するような背徳感もあり、迷わず手に取った。
“全夫が震えるシリーズ第3弾”として、ドラマ化も話題になった本作品、これはただの家族小説ではない──スリリングな匂いを直感した。
2.物語のあらすじ
登場人物と設定
結婚5年目で夫婦関係が冷え切った麻矢、離婚を経験した璃子、モラハラ気質の夫に悩みながら一人娘を育てる友里香。
三十代半ばになった大学時代の同級生3人は、それぞれ立場は違えど、みな夫への不満を抱え、時に集まっては愚痴を言い合っていた。
しかしある夜、友里香は夫との間で大きなトラブルを抱え、さらに麻矢の冷淡な夫が突然失踪する。
次々と起こる出来事は、固い絆で結ばれていた3人の関係にも、少しずつ亀裂を生じさせていく…。
作品の雰囲気
一見サスペンスを思わせる展開だが、中心にあるのは家庭内の問題と向き合う女性たちの心理。
それぞれの夫婦間に起きる問題とともに、三人の友情の変化や彼女たちの深層心理にも意識を向けて読んでほしい。
物語には、女友達グループ特有の“パワーバランス”もリアルに描かれる──リーダー格、その側につく友人、中立を保つ友人。特に女性なら学生時代に経験したこともあると思う。三人組というのは、バランスが取れているようで、いつでも2対1の構図ができてしまうのだ。
3.感想と考察
三人での愚痴は、お互いの息抜きであり、結束を深める時間だった。
しかし、あるときその内容が夫に漏れてしまう。
「誰が裏切ったのか」「どう繋がったのか」──その瞬間が、仲良かった三人組の関係に亀裂を生んだのは間違いない。
ここから先の展開は、疑心暗鬼と心理の揺れが絡み合い、ページをめくる手が止まらなかった。
物語では明らかに夫側が悪く描かれている。
現代においても結婚制度は昔とあまり変わらないように思う。仕事や家事、育児の負担は、どうしても女性に偏っているのではないか。それらの日常の不満が、あの強烈なタイトルに隠されていると思った。
新婚のころに思い描いていた「理想の家庭像」、「理想の夫婦関係」は、どうしたら続けていけるのか、読者自身に考えさせるきっかけとなるはずだ。
しかし、現実に本当に夫が死んだとき、あるいは突然失踪したとき──私たちは本気でその後を考えたことがあるだろうか。女同士の盛り上がる話のネタで終わればいいが、現実になったとき、私は生活や子供のことを一番に考える。
それは友達にも頼めない、リアルな問題として私自身に降りかかるのだ。
離婚という選択を迷わずできる人もいれば、不満はあっても行動に移せない人もいる。
どちらの立場にも共感できるからこそ、実生活では白黒ハッキリつけられないことのほうが多いといことなのかもしれない。

SNSで夫の愚痴を目にすることは多い。
昭和の時代にも、井戸端会議という主婦のおしゃべりの場があった。
時代は変わっても、女性がうわさ話や愚痴を口にする姿は変わらない──そう思うと苦笑しつつも、深く共感してしまった。
ただ、「口は災いの元」という言葉があるように、行きすぎたブラックジョークや悪口には、自分自身の責任が伴う。
本書は、人間心理を巧みに描きながら、そのことを私たちに静かに突きつけているのかもしれない。
私自身、この本を読んで自分の言動を振り返った。
そして、職場の同僚やママ友との井戸端会議では、もう少し口を慎もうと心に決めた。
4.まとめ

『夫よ、死んでくれないか』は、ただの刺激的なタイトルの小説ではない。
夫婦関係の現実、友人関係の微妙な距離感、そして人間心理の奥深さを描いた一冊。
夫への不満を抱える人、女友達の人間模様に興味がある人に、ぜひ手に取ってほしい。
本作はドラマ化もされており、原作との設定や展開に大きな違いがあると言われている。
原作を読んだ後にドラマ版も観れば、描き方の違いから作品の本質が見えてくるかもしれない。
愚痴を思いっきり吐き出したいときは、現代の素晴らしい文明の利器を使うのもひとつの方法だ。
あなたの愚痴を24時間いつでも聞いてくれて、やさしく寄り添ってくれるAIがここにいる。
ため込みすぎる前に、思う存分どうぞ。
最後に、あなたなら、もし夫が突然いなくなったら、どう行動しますか?
5.関連リンクコーナー
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